✅ オーバーヘッドとは?(共通の意味)
本来やりたい“中心の仕事・処理”以外に、追加で発生する余分な手間・時間・コスト のこと。
つまり
「本番の仕事のために必要な、付随的な負担」
これがオーバーヘッドです。
🖥️ ① ITにおけるオーバーヘッド(技術的オーバーヘッド)
ITでは主に CPUの余計な処理時間 や メモリの無駄、ネットワークの追加通信 などのイメージです。
■ 例1:関数呼び出しのオーバーヘッド
プログラムで関数を呼び出すときは
- 引数をスタックに積む
- 戻り値の場所を確保する
- 呼び出し元の位置を記録する
などの付加処理が発生します。
▶ 本来やりたいこと:計算する
▶ オーバーヘッド:呼び出し準備や後片づけ
■ 例2:仮想マシンのオーバーヘッド
VM(仮想マシン)は物理マシンの上に“1枚かぶせて”動きます。
- ハイパーバイザが割り込みを横取り
- メモリ管理を二重に行う
- I/O が一度余分に通る
▶ 本来:OSが直接ハードウェアを使う
▶ オーバーヘッド:仮想化の層を通るせいで遅くなる
■ 例3:暗号化通信のオーバーヘッド
HTTPSなどの暗号化は安全だが…
- 鍵の交換
- データの暗号化/復号
- CPU負荷増加
▶ 本来:データを送るだけでいい
▶ オーバーヘッド:暗号化作業のせいで処理が増える
■ 例4:マイクロサービスのオーバーヘッド
マイクロサービスは便利だが、
- ネットワーク越しの通信
- 認証やログなどの共通処理
- 冗長なサービス間調整
▶ 本来:機能を実行する
▶ オーバーヘッド:分割したことで増える通信・設定・監視
🧾 ② IT以外のオーバーヘッド(一般的なオーバーヘッド)
日常生活やビジネスでも使われる言葉です。
■ 例1:会社経営のオーバーヘッド(間接費)
本来の仕事(製造・開発など)以外に発生する費用。
- 会議の時間
- 管理部門の人件費
- オフィスの家賃
- 経費精算の手間
▶ 本来:商品を作る・サービスを提供
▶ オーバーヘッド:管理・維持に必要な間接的なコスト
■ 例2:スポーツの練習でのオーバーヘッド
格闘技を例にすると…
- 着替え
- ウォーミングアップ
- マットの準備
- 片付け
▶ 本来:技やスパーリングの練習
▶ オーバーヘッド:準備と片付け
■ 例3:車の洗車におけるオーバーヘッド
車を洗うためには、
- 用品を出す
- バケツに水を入れる
- ホースをつなぐ
- 片付け
▶ 本来:車を綺麗にしたい
▶ オーバーヘッド:準備・後片づけ
■ 例4:料理におけるオーバーヘッド
料理の時間の中には
- 買い出し
- 材料の下処理
- 調理器具の洗浄
▶ 本来:料理を作る行為
▶ オーバーヘッド:準備や片付け
🎯 まとめ:ITと一般での違い
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ITのオーバーヘッド | 主処理に対する余分なCPU・メモリ・通信 | 関数呼び出し、HTTPS暗号化、仮想化 |
| 一般のオーバーヘッド | 本来の作業以外に必要な手間やコスト | 会議、管理費、準備・片付け |
本質はどちらも「目的達成のための間接的な負担」 です。
補足:オーバーヘッドの英語
overhead
ITでもビジネスでもまったく同じ単語です。
🧭 語源(どこから来た言葉?)
■ ① 元々は「頭上の」「上にある」という意味
over(上)+ head(頭)
→ 「頭の上にあるもの」
英語では昔から「頭上の・高い位置にある」という意味で使われていました。
■ ② そこから派生して「直接には見えないコスト」へ
家の天井(overhead)は
- 常にあるが
- 直接目に見えない
- でも建物を維持するために欠かせない
という特徴があります。
ここから 「表からは見えないが必要な費用・手間」=間接費(overhead cost) という意味に発展しました。
▶ 例:会社の家賃、光熱費、管理部門の給与など
→ 商品を作るために必要だが、直接の原価ではない「頭上のコスト」
■ ③ ITの「オーバーヘッド」への派生
IT分野でも同じ考え方が流用されました。
プログラムの本質処理ではない「付随的な負荷」
→ これを “overhead” と呼ぶようになりました。
例:
- 関数呼び出しの前後処理
- メモリ管理の余計な処理
- パケットのヘッダ
- 暗号化の追加負荷
これらは 本来の目的の「頭上に乗ってくる負荷(コスト)」 というイメージで、語源と一致しています。
📝 まとめ:語源は “頭の上にあるもの”
| 単語 | 元の意味 | 現代の意味 |
|---|---|---|
| overhead | 頭の上・天井 | 見えにくいが必要なコスト、余計な負荷 |
▶ ビジネス … 間接費
▶ IT … 余分な計算・処理・通信の負荷
どちらも「目に見えにくい、上乗せされる負担」という共通したイメージから来ています。